【書評】「知的野蛮人」になるための本棚——複数の本から立体的な情報を得ること

最近は「本」とか「本棚」というタイトルが付いた本を読むのが楽しい。今回読んだのは『「知的野蛮人」になるための本棚』。これは書評本であると同時に、本の読み方を教えてくれる。

2冊ずつ紹介するスタイルが面白い

いわゆる書評には3通りある。

  1. 1冊を取り上げて、その本を紹介するスタイル
  2. 同じテーマの本を複数取り上げて、それぞれ紹介するスタイル
  3. 同じテーマの本を複数取り上げて、交差させながら紹介するスタイル

1つ目はこのブログでとっている形式。まぁ、良くあるタイプ。2つ目は東京新聞なんかがとっているスタイルで、同じテーマで3冊くらいピックアップして、それぞれ紹介していく。

そして3つ目の複数の本を交差させながら紹介していくのが、今回ご紹介する『「知的野蛮人」になるための本棚』だ。

この本では57のテーマを挙げ、それぞれにテーマに対して著者である佐藤優氏が2冊ずつ本を紹介していくカタチをとっている。テーマというのはたとえば……

  • ラジオの世界の魅力
  • 「婚活」を考える
  • 今こそ『資本論』を読む
  • オバマ大統領の戦略
  • 沖縄の米軍基地問題を考える

といった多岐にわたるものが挙げられている。各テーマごとの文章は短いのだが、ここで書かれていることは示唆に富んでいる。佐藤優氏の考え方を知ることもおもしろさのひとつなのだろうが、むしろ本当におもしろいのは、本の選び方や読み取り方だ。

たとえば「ラジオの世界の魅力」というテーマではこの2つの本が紹介されている。

  1. 『ラジオな日々』——放送作家の著者が描く80年代ラジオ業界
  2. 『手作りラジオ工作入門』——ラジオの作り方

前者ではラジオ業界のエピソードをなどを知ることができ、後者ではラジオを自分で作る工作本である。ラジオを提供する側と受信する側の2冊になっている。

著者はこうやってひとつのテーマを常に2つの視点から読み解く本を紹介する。対立する本を紹介することもあれば、補完し合う本を紹介することもある。入門本と難しい本を紹介したり、時にマンガを織り込むことがある。

「オバマ大統領の戦略」というテーマでは次の本を紹介する。

  1. 『オバマ演説集』——オバマ大統領の演説集
  2. 『大統領の陰謀』——ニクソン大統領のウォーターゲート事件を暴こうとする記者が書いたノンフィクション

これなんかもおもしろい選択だ。演説集はわかる。だけど、2冊目にニクソン大統領のノンフィクションをもってきた。著者の言葉を引用しよう。

そして、(引用者注:オバマ氏は)国民を束ねてアメリカ国家を強化しようとする。もっとも、この国民を束ねる傾向がいきすぎるとファシズムになるので要注意だ。
アメリカ大統領が権力を濫用すると、どうのようなことになるかは「ウォーターゲート事件」がよく示している

つまり『大統領の陰謀』を通して、アメリカ大統領が持つ権力などを読み解こうとしている。オバマ大統領について知ろうとしたら、つい「オバマ」と名の付いた本ばかりを手に取ろうとしてしまう人も多いと思うが、別のアメリカ大統領の本を読むことで知識の厚みを増している。

本屋のおもしろさ

こうやって複数の視点から本を選ぼうとしたとき、ネットじゃない物理的な本屋の魅力が浮かびあがってくる。

Amazonなどネット書店は欲しい本が決まっているときは便利だ。また、キーワードから検索したり、他の人のレビューが見られるのも便利だ。その便利はまったく否定しない。一方でぼんやりと本を選べる本屋の魅力も捨てがたい。

本屋の本の並べ方には意思がある。簡単に言えば、関連した本が近くに並ぶ。ラジオ関連の書棚の前に立てば、ラジオの作り方はもちろん、ラジオ業界のエッセイ、秘話本、歴史本などいろんな本が見つかる。

そうやっていろんな視点の本を読むことで、知識は立体的になる。

さいごに

この本が教えてくれることはふたつある。

まずは1つのテーマで複数の本を読むこと。しかも複数の視点の本を選ぶおもしろさ。入門書と高度な本。全体の話と、詳細の話。ノンフィクションとフィクションなど。そうやって知識は立体的に作り上げていくことが大切だ。

つぎにテーマを決めて読む楽しみだ。何気なく本を読んでいると、こうやってテーマを決めて本を選ぶことをしない。つまみ食いのようにアレコレ読んでしまう(それはそれでいいけど)。こうやってテーマを決めて、何冊も読むというのは本当におもしろい読書体験だと思う。

著者が薦めてくれる本を読むのもいいが、この本から学びたいことは本を読む姿勢なのだと思う。

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