席を譲って怒られた人を「外国人ですか?」と言われ続ける人生から考えた

「電車で席を譲って怒られた」という話を時々見かけます。今まで「怒るバカがいるんだ」と見ていましたが、まさか自分が怒る側に回るとは……。反省と今後の思いを書いてみます。

駅ビルのフロアマップで事件は起きた

夫婦で小田原駅の駅ビルに行ったときの話です。

妻がトイレへ行ったので、待ちがてら駅ビルのフロアマップを見ていました。各階にどんな店があるか書いてあるアレです。

「あ、最上階に本屋があるから行きたいなァ」

なんて見ていたら、斜め後ろからソーッとわたしの顔を覗き込んでくる青年が現れました。

覗き込まれて目が合い、一瞬の沈黙……。「誰だこいつ? もしかして会ったことあるかな?」と頭の中がグルグルします。「なんですか?」と言おうとしたその時——

「May I help you?」と青年。

「日本人だし、日本語分かります!」

外国人だと思われたのです。つい自分を主張するように強い口調になってしまいます。

彼は「あ、すいません……」とサーッと去って行きました。

繰り返される「外国の方ですか?」

わたしは母がアメリカ人、父が日本人のハーフです。生まれも育ちもニッポンで、中身は100パーセント日本人。っていうか英語だってカタコトです。日本国籍ですしね。

幼い頃から、外国人に間違われる体験は数知れず。

先日、ひとりで手ぬぐい屋に入ったときのことです。

「手ぬぐい好きなんですか?」と店員。
「そうなんですよ。なんかつい買っちゃうんですよね〜」

「この柄は新作で——」と他に客がいないので30分ほど雑談。そして「これ買います」と1枚を選ぶと……

「すごいですね。日本人より手ぬぐいを活用されてますよ!」

いやいやいや、日本人ですから! 30分、延々と日本語で話をして、なんなら住んでる場所の話さえしたというのに、躊躇なく「外国人」扱い。

脱力しながら「日本人です」と言わなければならない、自分。

誰も悪くない

間違えられることを怒っているんじゃないんです。まぁ、顔が濃いし、間違えるでしょう(本当はちゃんと訊いて欲しいけど)。

(もし日本人のあなたが誰かと30分ほど話して「で、いつ中国に帰られるんですか?」とか言われたら、嫌な気持ちとまでは言わないまでも、ちょっと思うことがあるでしょう? わたし、それが日常茶飯事なのです。ちなみに「でもハーフだからしかたない」という人がいたら言いたい。「ハーフという国籍はありません」と)

でもほんと、これ誰も悪くないんです。間違えちゃう人が悪いわけではない。最初の「May I help you?」と来た青年は120%善意なんです。だけど言われた方は「また外国人だと思われた」と思う。怒るわけでも、凹むわけでもないけど、嬉しいわけでもない。

だから一瞬真顔になってしまう。もしかしたら他人から見たら「険しい顔」に見えたかもしれない。そして感情の起伏なく「日本人です」と言ったつもりだけど、険しい顔で、「日本人です」と断言されたら、相手は「あ!怒られた」と思うかもしれない。

なんかお互い悲しい気持ちになって終わる。悲しい会話なのです。

で、やっと本題なのです。

気付きました。

これって、電車で席を譲られて怒ってしまう人の図式と近いな、と。(譲られる方がショック!?電車あるある『席ゆずり』の葛藤——まとめnaver)

「あ、妊婦さんだ。席どうぞ!」(ニコ)
「妊婦じゃありません!」(イラ!)

とか

「あ、老人だ。席どうぞ」(ニコ)
「そんな年じゃない!」(イラ!)

『自分はこう見られたい』と『実際の見られ方』に差があるから、イラッとしてしまう。あるいはイラッとしたつもりはなくても、わたしのように真顔で「妊婦ではありません」と言うと、相手は「善意のつもりなのに、アワアワ」と悲しくなる。

どうすればいいんだろう?

わたしは決意しました。

『善意を優先する方が絶対にいい』

席を譲って怒られた人は、もう席を譲らなくなるかもしれない。

「May I help you?」で怒られた(と思った)人は、もう外国人を助けないかもしれない。

そんな社会は望んでない。だから、少し過剰なくらい感謝しよう、とわたしは決めました。「外国人のフリをしようかな」とさえ思いましたが、やっぱりウソをつくのは違う。だから——

「ありがとうございます。日本語分かるので大丈夫です。顔濃いから分かりづらいですよね(ニコ)」とか「ハーフだから分かりづらいですよね」

とちょっと笑いを取るくらいの気持ちで対応しようと思いました。

実際より年寄りに見えてしまう人。妊婦に見えてしまう人。ぜひ、本当の老人、本当の妊婦のために、にこやかに対応してあげてください。

もし善意がうまくいかなかったら

善意で席を譲って怒られた(と思った)人は、ぜひ懲りずに続けてください。

みんな「自分はこう見られたい」という自分像があります。それとズレてしまったから、相手はイラッとしてしまったのかもしれない。でもその人の「理想の自分像」なんて分かりっこないし、それを探り合って、親切が起きない社会はよくないです。

すれ違いは悲しいけど、必ず起こる。起きたときににらみ合うよりは、笑い合う精神で生きていきたいものです。

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