林真理子のエッセイ『ルンルンを買っておうちに帰ろう』が巷のブログより尖ってる

今や売れっ子作家である林真理子のデビュー作のエッセイ『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を今さら読みました。いま読んでも尖ってて、驚くと共に笑ってしまいます。そして気が付きました。ブログって少なくともこれくらい尖ってないとダメなんじゃないか、と。

林真理子

本読みなら林真理子先生(以下以上敬称略)のことを知らない人はいないでしょう。直木三十五賞、柴田錬三郎賞、吉川英治文学賞なんかも受賞しているトップクラスの作家です。

今回ご紹介する「ルンルンを買っておうちに帰ろう(以下「ルンルン〜」)」というデビュー作から始まり、映像化されている「下流の宴」や「不機嫌な果実」も有名ですね。

デビューはエッセイ

小説家として知られる林真理子ですが、デビューはエッセイ。その前はコピーライターをしていました。その頃から売れっ子だったようです。

デビュー作となる「ルンルン〜」は1982年の出版。わたしの生まれ年でございます。

彼女の小説は何作も読んでいて、毎度毎度「女をえぐるなァ」とヒヤヒヤワクワクしていたので、そのデビュー作はどうだろう? と興味を持ったのが、今回「ルンルン〜」を手にした動機です。

針の先のように尖ってる

この「ルンルン〜」を読むと、笑ってしまうくらいの尖りようです。自分の知人・友人・前職の同僚など、気に入らないものは切る刺す焼く。たとえば、ある章の書き出しはこうです。

友人のことはなるべく悪くいいたくないのだが、わたしの女友だちというのはかなり性格が良くないのが多い。おまけに嫉妬深いので、群を抜いてお金持ちの私は、いろいろと苦労が絶えないのだ。
中でもスタイリストのエミちゃんはかなりの習慣的なもので〜〜

とまぁ、こんな具合。男に甘く女に厳しい林真理子は、若い男を呼び寄せようと苦心し(うまくいかないのだが)、若い女の成功者をたたき伏せようと躍起になっているのがわかる。

そして自分の感情には超が10個はつくほど素直。たとえばこんな文章がある。

(わたしのように)たいして才能を持っているわけでもない二十代の女の子が、普通のOLの数倍の金を稼ぐという事実。
「間違っている」
と確かに思うけれど、このマチガイはラクで私にとって都合がいいから当分しがみついていようと思うのね。
けれでもこのマチガイは私だけでいい。
他の女たちがこのマチガイを享受しているのは嫌なのだ。

なんと自己中! なんと正直! わかるわかる、と男のわたしでも頷いてしまう。人間ってこうでしょ? みんなだって汚いでしょ? とこの本を片手にワーッと街を駆け回りたい気分にさえなりました。

超個人的な意見

なんでこんなにおもしろいかと言えば、この本が極めて個人的な本だから。もう日記のレベル。普通の人なら他人に見せられないような、ドロドロした感情を本にしてしまったという感覚。

みんなうわさ好きで、ゴシップが好きでしょ。この本を読むと、下のどっちかに別れると思う。

  • そうそうそう、ほんとみんなバカだよね〜、と林真理子に共感
  • ばかばかばか、なんて汚い女なの? と林真理子に反発

どっちにしたってゴシップのネタになる。どっちにしたって満たされる。

おもしろいブログと似てる

これってなんだかおもしろいブログと似てる、と急に思いました。むしろおもしろいブログってこうでなくちゃいけないのでは、とさえ思いました。

普通、本だと書く方も遠慮しちゃって、尖った内容になりにくい(林真理子はこの壁をヒョイッと乗り越えたわけだけど)。でもブログなら、その気さえあれば、いくらでも毒を吐けて、いくらでも自分をさらけ出せる。

だれも止める人はいないし、無料で書いているんだから、怒られる筋合いもない。

ブログこそ本来は日記みたいなもんなんだから、きちっと自分をさらけ出して書かなくちゃおもしろくない。

たとえばはあちゅうさんとかイケダハヤト氏あたりが人気あるのは、その気(け)があるからでしょう。イケダハヤト氏のブログはそんな魅力を感じていませんが、はあちゅうさんのはおもしろい。Twitterで誰かに「金の亡者」といわれて、ワーワー言い返している記事なんて、すごくおもしろい。

もし「ルンルン〜」が、いまブログで書かれていたら大変な人気になったハズ。いや、あのときだって本として大変な人気になったのだから、人が見たいものなんて今も昔も変わらないですよ。

いい子になろうとしちゃいけないんだな

自分を省みたとき、やっぱり「いい子になろう」願望があるんですよね。

「人のことを悪く言っちゃいけません」

「そんなことをしたらみっともないでしょ」

そんな気持ちが付きまといます。

そりゃ、人間としてはそれでいいけど、「表現」みたいなことをしようと思うなら(ブログでも小説でもなんでも)、「だけど俺はそう思うんだもん」という開き直りが必要なんだな、と思うのです。

開き直ります、わたし。ルンルンしたいと思います。

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