mixi時代の女ストーカー(第1回 きっかけはラブレター編)

男のわたしですが、8年ほど前にストーカーの被害に遭いました。そのときの一部始終を書いてみたいと思います。そしてストーカーがわたしから離れていった、ネット時代特有の出来事。

参考にはならないけど、「こういうこともある」という話として読んで頂ければと思います。

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発端

わたしが24歳くらいのころの話です。東京で働く会社員でした。

朝は駅まで10分ほどのバスに乗り、満員電車に乗り換えて通勤します。

そのバスで始まりました。

いつもの通り、バスの後ろの方の2人席に座って読書をします。すぐに女性が隣に座りました。この女性、ここ1週間ほど毎日わたしの隣に座っていました。とはいえ、バスっていつも同じ顔ぶれだから、あまり気には止めてはいませんでした。

「——ねぇ」

その女性が小声で言います。気のせいかな、と無視すると「ねぇってば」と繰り返す。しかたなく、顔を向けると、その女性は軽く頭を下げてニコリと笑いました。顔をちゃんと見るのは初めてのこと。

35歳くらいで、ぽっちゃりよりは肥満寄りの女性です。

「なに読んでるの?」
「○○(小説)です」
「へぇ、本が好きなんだねぇ。……いつもここで読んでるもんね」

背中がゾクッとします。「いつも」って……なんで知ってんだ。まぁ、あれか、バスっていつも同じ顔ぶれだし、なんとなく気付いていたのかな……。っていうか、もしかしてどっかで会ったことある人?

「どこで仕事してるの?」
「東京で」
「どんな仕事してるの?」
「コンピューター関連」

「どこかで会ったことある人かもしれない」という気持ちが拭いきれず、冷たくあしらうことができません。かといって何か特定されるような情報を渡してはいけない、と心のアラーム音が鳴っています。

バスが駅に到着し、通路寄りに座っていた彼女が先に降りていきます。わたしはわざと距離をおいて、1番最後にバスを降りました。料金を払い、バスのステップを降りたところに、彼女はいました。満面の笑みです。

「これ」

差し出されたのは名刺大くらいの小さな封筒でした。

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イメージ画像です

「はぁ」と受け取ると、彼女は足早に駅に向かって行きました。彼女が駅に入ったことを確認し、封筒を開いてみます。

スズキK子(仮名)
0000-00-0000 (電話番号)
けんちゃんへ

名前と電話番号はともかく、わたしの名前……。どうしてわたしの名前を知ってんだ。やっぱり会ったことあるのか……? そして漂う香水の香り。なにかおかしい……。

2日後、駅前の怒号

もちろん手紙は無視しました。

そして2日後のバスの中です。

わたしはいつもの席に座り、隣に、例のK子が座りました。「ヤバい!」心拍数が上がります。なにがヤバいのか分かりませんが、とにかく何か異常事態が起きていると、このとき初めて認識しました。

隣に座ったK子は何も言いません。わたしも本に目を向け、気が付かないふりをします。通路側に彼女がいるので逃げられないし、黙っているしかない、と。

彼女は最後まで黙ったまま、バスは駅に到着。K子がバスを降ります。先日と同じように、わたしはわざと最後にバスを降ります。半ば予想通り、降りたところでK子が待っていました。

「なんでよ!」

いきなり怒鳴られました。

「なんで、女の子が電話番号を渡したのに電話してこないのよ!」

駅前に響き渡る女のキンキン声。通勤中の人たちが振り返ります。頭の中のアラーム音が大音量で鳴り響きます。

「なんで用事がないのに電話しなきゃいけないんですか?」と真面目に答えるわたし。
「電話番号ありがとうございます、とか言えないの? あんた」
「は!? もういいです」

もうダメだ、と思い、無視して駅に向かいました。ちらりと横目で様子を見ると、K子もゆっくりと駅に向かってきましたが、追ってきているというわけでもなさそう。ふぅ、っと胸をなで下ろしつつ、閃きました。

「あいつがどの路線の電車に乗るか知っておこう」

トイレに入るふりをして隠れます。彼女は少し距離をおいて歩いてきましたが、わたしがトイレに入ったことには気が付いていない様子。ソッと彼女が向かうホームをチェック。するとわたしとは違う路線でした。

(よかった、少なくとも電車は別だ……)

安心した直後、あることに気が付き、心拍数が跳ね上がりました。

そもそもなんで同じバスに乗れたんだ……?

実はわたし、毎日乗るバスの時間が違うんです。

ゆっくり朝ごはんを食べ、テレビのニュースなんかを見て、気が向いたら家を出るという生活。早めに出ることもあれば、ギリギリに急いで出ることもあります。6時半のバスに乗ることもあれば、7時半のバスに乗ることもあるのです。

毎日乗るバスが違うのに、どうして彼女はわたしが「いつも同じ席で読書している」ことを知ってたんだ?

今日だって、乗るバスが同じなのは偶然じゃない。

狙って、同じバスに乗ってるんだ……。

ただの告白じゃないのは、このとき確信しました。

続きます。

ストーキング、というか、異常な求愛行動はこの時に始まり約10ヶ月続きました。

危険な目には遭っていませんので、安心して読んでください。

続きはこちら! 第2回 電車がバレてあわあわ編

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