文章を書く人は必読! 3人の天才が書いた、3冊の『文章読本』

日本を誇る大文豪が、その文章に対するこだわりを余さず書いた3冊の同名の本。文章に携わる人ならば、1度は読んでおくべきです。

3冊の「文章読本」

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わたしは『小説の書き方』的な本を読むのが好きです。

とはいえ、『小説の書き方』系の本を読んでも、小説を書けるようにはなるとは思っていません。わたしが読む理由は、「他の小説家の仕事場」を覗き見るような、スケベ心があるからです。

さて、そうやって読んできた『小説の書き方』系の本で、圧倒的におもしろく、ためになる、3冊の本があります。そして、その3冊がどれも『文章読本』という名前だからおもしろい(1冊だけ『新文章読本』ですが)。

そして、書いたのは川端康成・三島由紀夫・谷崎潤一郎と、日本が誇る天才作家たち。

初心者向けのハウツーではなく、各作家の文章に対するこだわりが書かれており、そのこだわりの深さや美しさにため息が出るばかりです。小説を書く人に関わらず、文章に興味がある人はぜひ読んでみて欲しい3冊です。

『文章読本』(三島由紀夫)

三島由紀夫の文章は美しいことで有名ですね。彼に書かせれば、「美しい文章」について語る文章が、すでに美しいのだから、頭が垂れる想いです。

次の文章は会話に関する部分です。

小説の会話というものは、大きな波が崩れるときに白いしぶき泡立つ、そのしぶきのようなものでなければならない。地の文はつまり波であって、沖からゆるやかにうねってきて、その波が岸で崩れるときに、もうもちこたえられなくなるまで高く持ち上げられ、それからさっと崩れるときのように会話が入れられるべきだ。

考えさせられる一節です。

『文章読本』(川端康成)

川端康成の『文章読本』からは彼の勉強熱心さが滲み出てきます。

彼ほどの大文豪であれば、自分の作風を崩さず作家人生を歩むことは簡単だったはずです。彼の余韻・間のある、ムダのない文章はそれ自体が美しく、まさに日本が誇る芸術財産の1つだと思いますが、そんな彼でも他の作家の文体を勉強し、ときに真似てみて、自分の作品に取り入れようとする。

そういう努力がこの本から見えてきます。

この本では泉鏡花や志賀直哉、谷崎潤一郎などいろんな文体の作家の文章を持ってきて比較し、分解し、吟味します。

小説が言葉と文字による芸術である以上、我々は、表現を常に文章によって行うほかはない。絵画が線や色によって表現し、音楽が音によって表現をするように、小説は文章によって、表現される。

この文章はわたしがいつも肝に銘じているものです。また少し長いですが、この単語へのこだわりも痺れるものがあります。

われわれの言おうとする事が、たとえ何であっても、それを表すためには一つの言葉しかない。それを生かすためには一つの動詞しかない。それを形容するためには、一つの形容詞しかない。(中略)その動詞を、その形容詞を見つけるまで探さなければならない。決して困難を避けるために良い加減なもので満足したり、たとえ巧みに行ってもごまかしたり、言葉の手品を使ってすりかへたりしてはならない。

言葉は作家の武器です。いい加減なことをしては絶対にいけないのです。

『文章読本』(谷崎潤一郎)

谷崎潤一郎の文章は本当に美しいですね。痺れるうまさです。

短編の「刺青」など、わたしは何度も読み直したものです。

さて、彼は他の作家に負けず劣らず言葉に対するこだわりが強い。そして「感覚」を大切にしているようです(あくまで非常に高度な理論がある上での感覚ですが……)。

『(文章の)調子について』という章でこのように語られています。

調子は、いわゆる文章の音楽的要素でありますから、これこそは何よりも感覚の問題に属するのでありまして(中略)文章道において、もっとも人に教えがたいもの、その人の天性によるところの多いものは、調子であろうと思われます。

されば文章における調子は、その人の精神の流動であり、血管のリズムである――

もしある人が自分の文章の調子を変えようと欲するなら、むしろ心の持ち方とか、体質とか、云う方面から改めてかかるべきであります。

まさに心理や哲学の世界。その形のない、文章の粋を谷崎潤一郎は追求していたのでしょう。

3人ともノーベル文学賞候補

この3人は、それぞれノーベル文学賞の候補に挙がっています。誰が取ってもおかしくなかったと言っていいでしょう。

三島由紀夫に関しては、もし若くして死ななければ、日本人として2人目のノーベル文学賞受賞者となっていたかもしれません。

それほどの実力者が、その文章への追求を書いている本です。

小説家に限らず、文章に携わる人なら読んでおきたい本でしょう。

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