原稿と呼ばれるものは短いものでもScrivenerで書くべき9つの理由

Scrivener(スクリブナー)は “原稿” と呼ばれるものをすごく上手に扱ってくれるソフトだが、「長文執筆で便利である」ことが強調されて、長くない文章で利用を躊躇する人もいると思う。しかしたとえブログや読み切りのコラムのように、長くない文章を書くときでもScrivenerはアナタの力になるのだ。その9つの理由をご紹介しよう。

Scrivenerとは?

Scrivener App
カテゴリ: 仕事効率化
価格: ¥5,400

Scrivenerの詳細についてここで説明しないが、長文執筆のためのソフトウェアである。ずいぶん昔にも紹介記事を書いたことがある。

旅する作家の道具箱 第4回 書く道具ScrivenerとiText Pro

また、これから使い始める人はこういう書籍もあるので、活用されてもいいだろう。わたしも最近読んでみたが、まったくの初心者が最低限使えるようになるところまで解説されているので、いいスタートが切れると思う。Kindle版もあるので、すぐにでも始められる。

さて、「長文執筆環境」などと呼ばれることもあるScrivenerだが、短文ではつかえないということではない。たとえばブログの記事をScrivenerで書くのも悪くないだろうし、コラムなどを寄稿している人は、1つ1つのコラムが短いとしても、Scrivenerで管理することを考えてもいいと思う。

その理由を9つ挙げてみる。

1. 将来別の媒体で発表するもの簡単

これがもっとも大事なことである。

たとえばブログを書いているとしよう。あるいはnoteやMediumでコラムを書いているとしてもいい。わたしのようにネットで小説を発表しているなら尚更これが生きてくる。

「いまは原稿をネットで公開して終わりだが、将来、原稿がたまったらKindleで電子書籍として売る日が来るかも……」

あるいは

「本にする機会があるかもしれない」

いまはそういうことが簡単に起こる時代だ。

そういうとき、もしブログ・note・Mediumに直接原稿を書いていたら、まずそれをダウンロードして……というところから始まる。本にするのは大変だ。

しかしScrivenerに書き溜めておけば、コンパイルという作業1つで、電子書籍用のフォーマットや書籍用のフォーマットに変更して出力することができる。

Scrivenerは「書くこと」と「最終原稿の体裁」を分けて考えているので、書くときは何も意識せず書いたとしても、それを本・電子書籍・PDF・標準テキスト・Wordなどいろんな形式で出力することができるのだ。

1つのテキストをいくつかの媒体で発表する可能性があるなら、Scrivenerで管理することを検討するといい。

2. バックアップがとれる

原稿を書くことを生業にしているなら、データの損失は致命的だ。

バックアップは2重にも3重にも取っておかなくてはならない。

Scrivenerは過去の数バージョン(設定により数は変更可能)のバックアップを取っておいてくれる。だから昨日の状態、一昨日の状態などを取り出すことさえ可能だ。

3. バージョン管理ができる

バージョン管理ができることはScrivenerを使う最高の理由になるだろう。

たとえばあるウェブ媒体に頼まれてコラムを書いたとしよう。渾身込めて書いた初稿が、ウェブサイトの意向で大幅にカットされることもある。

そんなとき、ただ不要部分を消してしまうのではなく、オリジナルバージョンと、カット後のバージョンを記録しておくことができる。

将来、別の媒体で同じコラムがつかえるとき(たとえば書籍化されるときや自分のブログに転載するとき)、オリジナルのバージョンから推敲し直すことができる。そしてそのバージョンをまた記録しておく。

といった具合に、1つのテキストが媒体によって変わったり、アップデートされたりする履歴を管理することができる。

4. プロジェクト全体で『検索と置換』ができる

Scrivenerでは複数のテキストをプロジェクトという単位で管理する。そのプロジェクト全体で『検索と置換』ができるのは、じつは驚くほど便利なのだ。

たとえば、コラムの連載を将来書籍化するとき、連載の中で表記揺れ(ぼく・僕、など)が起こることがある。

それを一括して置換できるのだ。

5. 正規表現を使った『検索と置換』ができる

『検索と置換』絡みでもう1つ便利なのが正規表現がつかえることだ。

正規表現について深入りしないが、より複雑な検索を行うことができる。たとえば「ぼく|僕」と書けば、“ぼく” あるいは “僕” の両方にヒットする。ほかにも

コンピュータ[ー]? = “コンピューター” あるいは “コンピュータ” にヒット

少し高度な例だと

\d{2}-\d{2} = 「12-34」といった2桁の数字をハイフンで結んだ文字にヒット

といったことができる。4桁以上の数字を探したり、電話番号を探したり……、いますぐに用途が浮かばない人も「こんな高度な検索ができる」ということは知っておいた方がいい。いつか役に立つ。

6. 集中執筆モードが便利

Scrivenerには集中執筆モードがある。

通常の編集画面でCmd+Option+F(Mac)とタイプするか、メニューのView→Enter Composition Modeにいけばいい。すると下の画面の「ように、他のアプリなどが一切非表示になり、文字入力のみが可能になる。

《原稿用紙1枚の物語》を執筆中の画面

小説など、集中して書きたいときはこのモードを必ず利用している。

7. キーワード管理ができる

この機能は使ったことがないとありがたみが分からないかもしれないのだが、簡単に言えばテキストファイルごとにタグをつけられるようなものだ。

使い方はユーザに任されているので、自由に使えばいい。

例えば長編小説であれば、章ごとにファイルを分けるだろうと思うので、章ごとに登場人物をキーワードに記録していく。すると、頻繁に登場する人物と1度しか現れない人物などが浮き彫りになる。

この機能は長文だけに役に立つものではない。

わたしは旅系のコラムを書く機会があったので、「国名」と「コラムのジャンル」をキーワードに入れていた(インドネシア・グルメといった具合に)。

そうすると「前にもインドネシアのこと書いたな」というときに、それを探してチェックしたり、「グルメ系の記事が少ないから、次はグルメ系にしようかな」なんて判断もできる。

自分の文章のメタデータを管理できるのだ。

8. iPhone/iPadを利用して細切れに書くこともできる

これはわたし個人的にはあまりやらないのだが、サラリーマンや移動が多い人には朗報かもしれない。

ScrivenerとDropboxを上手に使えば、家ではパソコンで、出先ではスマホで執筆なんてこともできる。

わたしがたまにやるのは、原稿はパソコンで書くけど、最終的に読み直しはiPad片手にソファで——という使い方だ。その場で必要に応じて直すこともできるし、なによりパソコンの画面を離れることで、気分が変わり、誤字にも気付きやすくなり、自分の文章を客観的に精査できる。

9. 慣れておくことで、いつか長文を書くときに役に立つ

「いまは細切れの文章しか書かない」という人も、積極的にScrivenerを使うといい。ここまで挙げたように、長文でなくても十分に活用することができる。

そして短い文章をScrivenerで書いておくと、いつか長文の執筆が必要となったときに、ゼロから学ばなくて済む。

というのもScrivenerのような「統合執筆環境」と呼ばれるものは、すこしクセがあり、慣れていないと、書き始めで戸惑うことにある。

普段から使い込んでおくと、いざとなったときに便利だ。

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