物書きとして、いつも手近に置いておく “バイブル” 5冊をご紹介

数ある蔵書の中には「すごく好きな本」や「まあまあな本」などがありますが、そういう好みを超越した “バイブル” と呼ぶべき本があります。各方面に1~2冊ずつある中で、今日は「文章を書く人にオススメしたいわたしのバイブル」を5冊ご紹介したいと思います。

小説を書く人はもちろんのこと、ブロガーや、小説以外の本を書く人にもおすすめです。

バイブルを持つことの大切さ

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ここでいう「バイブル」とは「この分野のことはこの本に頼る」という、絶対の信頼を寄せる本のことです。

ただの良い本ではなく、もしかしたら生涯この本を片手に生きていくかもしれない、というくらいに重要な本です。だから数も少なく、ジャンルごとに1~2冊ある程度。

とにかく迷ったときはこの本を開くし、人に本を薦めるときも自分の中のバイブル本から勧められないかな、と考えます。

今日はその中の5冊をご紹介します。

1. 文章技術系『日本語の作文技術』(本多勝一)

朝日新聞社の記者であり、文化人類学的なルポを多数出版している本多勝一氏ですが、彼の日本語に対するこだわりもなかなかです。

この『日本語の作文技術』を読むとわかりますが、分かりやすい日本語は決してセンスで書き上げるものではなく、緻密な論理によりなり立っているのです。

言い換えれば、正しい論理を理解し、日本語という言語を理解すれば、分かり安い文章を書けるのです。

たとえばこの本で修飾語について、丁寧に語られています。ひとつだけご紹介しましょう。まずは悪い例——

私は小林が中村が鈴木が死んだ現場にいたと証言したのかと思った。

こんなに悪い文章を書く人がいるとは思いたくないですが、この文章と同じ失敗をやらかしている人はいくらでも見かけます。

じつはこの文章、文法的には間違えていないのです。ただ、「修飾する語と、される語の距離が遠い」というミスを犯しているだけなんです。

語順を変え、修飾語と、修飾される語を近づけてやるだけで、これだけ分かりやすくなります————

鈴木が死んだ現場に中村がいたと小林が証言したのかとわたしは思った。

ほかにも「は」と「が」の使い分けや句読点の使い方といった、実践的なノウハウが詰まっています。時々チラリと読み直しては気を引き締め直す本なのです。

 

2. 文化人類学系『ヒマラヤ・チベット・日本』(川喜田次郎)

著者の川喜田次郎氏はKJ法で有名ですね。KJ法は彼のイニシャルからきていることはご存じの方も多いでしょう。

KJ法:カードを使った「発想法」であり、感覚に頼りがちな『アイディア』というものを、確実に生み出す手順である。

彼がKJ法を生みだしたわけは、文化人類学者として集めた膨大な資料をまとめ上げるためでした。

彼の研究スタイルは現地調査・フィールドワークに重きを置くものです。そうやって現地で集めた大量の情報の断片から、本を書き上げる手法としてKJ法が生み出されたというわけです。

決して思い込みやレッテル貼りによって、現地の文化をカテゴライズしようとはしない、彼のスタイルに強く共感しています。その姿勢はすべての文章家が見習うべきものでしょう。

わたし自身、ヒマラヤ・チベットのエリアに強い興味を持っており、いつか必ずヒマラヤ・チベットを題材にした本を書きたいと思っています。

そんなわたしにとって川喜田次郎氏はまさに “先生” であり、彼の本は “バイブル” なのです。

 

3. 小説技術系『文章読本』(三島由紀夫)

少し前にこの本は紹介しました。

文章を書く人は必読! 3人の天才が書いた、3冊の『文章読本』

『文章読本』という本は三島由紀夫・谷崎潤一郎・川端康成の3人がそれぞれ同名の本を書いています。実際のところ3冊ともわたしにとっては “バイブル” でして、どの1冊をここで取りあげるか、凄く悩みました。

三島由紀夫の文章の美しさに対するこだわりや、姿勢は、それ自体が美しく、彼のレベルでこだわることが、文章を書いていこうとする人の理想だと思うのです。

この本は以前ご紹介しているので、細々と書きませんが、彼の文章のこだわりが書かれた、この本自体がすでに美しいのです。

 

4. 小説系『鏨師』(平岩弓枝)

平岩弓枝先生は1959年に直木賞を受賞し、長年直木賞の審査員もされていましたね。

尊敬、敬愛、なんて言葉じゃ表現しきれないほど、先生の作品をあがめています。

ここでご紹介している「鏨師」は、直木賞受賞作です。短編ながら、深いドラマ性と人情が込められていると同時に、駆け引きの緊張感が高いレベルで表現されている作品です。

読後感も「よい」とか「わるい」などというありきたりなものではなく、いつまでも深い余韻を残す作品です。

悔しいくらいうまい作品です。

5. 心理学系『ユング心理学入門』(河合隼雄)

文章系のバイブルの中に、このユング心理学を入れたのは、小説も、心理学も、まさに「人間」を掘り下げるという目的が合致するからです。

決してその方法は同じではありませんが、同じ山を別のルートから登っているような感覚を持っています。

『人間の心を学問なんかで理解できるか!?」

なんて私も考えていましたが、とんでもない。そもそも人の心を、人が理解しようというのが、難問なのです。それは小説であろうが、心理学であろうが、同じ。険しく切り立った、同じ山を登る心理学という学問を、私は他人事とは思えないのです。

そして、この本を読んで知った最も重要なものは

「学問といえども、心理学は 1+1=2 といったシンプルな論理で組み上げられているわけではない」

ということ。非常に人間味のある、理解や協調といった曖昧な感覚の上になり立っているのです。

文章に限らず、人を描く人たちは、家事っておいていい学問だと思います。

勉強、勉強、また勉強

小説を書くというのは、ひたすら勉強だと思っています。

町を歩けば勉強。旅行をすれば勉強。本を読めば勉強。小説を読んでも勉強。

一生勉強です。

みなさんの “バイブル” はなんですか?

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