小説に限らず、何かを作る前には悶々と構想を練り、詳細を練り、と想像力を膨らませたりしなければならない場面が必ずある。そういう時に以前の私はノートを広げ、落書きするように思いついたことをノートに書き込んでいくことで発想を広げていった。大事なことは形式にこだわらず、ただ自由に書けること。
それを非常に自由にやらせてくれるのが
Scapple だと思う。

wpid-PastedGraphic-2013-10-26-19-30.png

1.Scapple とはなにか?

Scapple というのは本当に落書き帳だと思う。もう少し専門的な(?)用語だとマインドマップを書くためのツールに近いが、それも違う。やはり落書き帳だ。
雰囲気だけ見てもらうために、サンプルを作った。

wpid-ScappleExample-2013-10-26-19-30.png

こんな風に書いた文字を線でつないだりできる。が、右下の文字のように線でつながなくてもいい。とにかくルールはない。色を付けたり、文字の周りを四角で括ったりもできるが、それも必須じゃない。

いわゆるマインドマップツールも使ったことがあるが、自分向きじゃないと思った最大の理由は1つの枠の中に長文をかけないこと。上の例でも分かるように、数行にわたるメモがあると思うが、これをできることが Scapple の魅力だと思う。場合によってはこの1つのメモが数十行になることもある。

使うと分かるもう1つの強い魅力は書き込める範囲が非常に広いこと。ノートで言えば、A1~2くらいの書き込みスペースがあるのではないか?

2.どう使うか?

さて、実はどう使うかは先ほどのサンプルの通りだ。

wpid-1__@__ScappleExample-2013-10-26-19-301.png

プロットやあらすじを作る手前(または作っている途中)のステージで、まだストーリーがボンヤリしている場面で使うことが多い。

手順は自由だが、自分の平均的な始め方としては、まずボンヤリしているストーリーをだらだら書いてみる。で、そのストーリーで気付いた欠点や不足を回りに書いていく。たとえば上記例だと、まだ桃太郎の敵や一緒に戦う仲間がイメージできていないので、周りに敵や仲間について適当に書き足していく。で、脈絡もなく思いついたことを書いていくと、なんとなくストーリーが見えてくる。すっきりとまとまれば、Evernoteに移って、丁寧にプロットを作るし、まだ練りたいならこの場であらすじを書き、また練ればいい。

なにしろこの場で長文が書けるので、短編であればこの場であらすじ~プロットまで完成してしまうケースもある。それならそれで良い。

また、とにかく書ける面積が広いので、1つの小説につき1つの Scapple ファイルしか作らない。「人物構成用」「舞台設定用」などファイルを分けることも可能かもしれないが、今のところ1つの中に詰め込む方が、全体が見渡せて、想像力を膨らませるのには有効だと思う。

余談だが、こういう想像力を膨らませるツールとして、昔は手書きのノート、その後は Evernote、今はこの Scapple を使っている。Evernote を使っていた時は箇条書きを駆使して書き込んでいたが、想像力・発想など曖昧なものを広げていく時は Scapple の方が圧倒的に良いと思う。ただし執筆に入る前やアイディアがまとまった時は、箇条書きに直しておくとあとで読みやすかったりもする。

というわけで「Scapple で広げ」「Evernote で整理」する、というのが1つの手法として有効だと思っている。また、整理については今後の連載で触れる予定の Scrivener も有効だ。

——————————————————
Amazonで発売中

父の筆跡・秋明菊の花びら、ほか

旅を始める前から、会社員として働いていた時もメモなどはすべてEvernoteだった。だから小説についてもEvernoteを使うことはほとんど必然だった。

wpid-PastedGraphic-2013-10-23-17-30.png

Evernoteとは何か? というのは今更説明の必要はないかもしれないが、簡単に書けば「パソコンやスマホなどで同期が取れるメモアプリ」と思えばいい。
Evernoteは執筆のすべてのステージで使っている。

  1. 執筆前の気ままなメモ
  2. 構想を練る時
  3. 執筆中のメモ
  4. 執筆後の推敲

保存のルール

まず、保存する際のルールだけを紹介しよう。

○資料……Webサイト、雑誌、本、など外部から入ってくる情報

ノートブック:Novel Scrapbook
タグ:clip, novel, (web, email, magazine, bookのいづれか), idea

○メモ……自発的に思いついたメモ

ノートブック:Novel Note
タグ:novel, note, idea

また特定の作品に依存する資料やメモはすべて、作品名をつけたノートブックに保存する。

使い方

ここまでのルールを守ってノートを貯めていくと、いざ小説を書こうと思った時に、Evernote全体で「tag:novel tag:idea」と検索すれば、過去の自分が興味を持った資料や、思いついたネタが一覧で出てくる。その中からピンとくるものを探せばいい。

また、いざ執筆を始めたら、すぐに作品名のノートブックを作り、そこに関連資料を全部放り込む。特に旅をしているとネットで見たものや過去に貯めた資料が大半になるので、とにかくクリップしていく。そうすればネットが繋がらない時でも、資料にアクセスすることができる。

また執筆開始後はタグの使い方が少し細かくなる。すべてのノートが次の三つのどれか(極めてまれに複数)のタグを持つ

  1. document - 作品に直接関係する資料(プロット、人物ノート、舞台ノート、など。基本的には自分で作成したもの)
  2. research - 調査資料。たとえば舞台となるエリアの写真など。
  3. note - メモ。思いつきとか

Evernoteは検索の保存ができるので、それぞれのタグを含む検索を保存しておき「設定・プロット」「調査資料」「メモ」という名前ですべて保存しておく。そうすると、執筆中はこの3つの検索を行き来することになる。

まとめ

Evernoteの使い道は以下の3通りと言える。

  • 資料のクリッピング
  • メモ帳
  • プロットや人物設定などの作成資料

オンライン時に同期さえしておけば、オフライン時にもすべての資料へアクセスできる。また常日頃いろんな資料を放り込んでおくと、いざというときに役にたつ。自分が入れているような情報を適当に挙げてみよう。

またiPod touchにもすべてのノートをオフラインに保存しているため(そう、Premiumユーザなのだ)、執筆時に、常時みたいものはiPodで開きっぱなしで隣に置いておいたりもする。そうするとパソコン上で画面を行き来せずに便利なのだ。

というわけでEvernoteは紙のノートの代わりであり、スクラップブックの代わりであり、設定などを書いておく作品ノートの代わりである。

——————————————————
Amazonで発売中
父の筆跡・秋明菊の花びら、ほか

旅をしながら小説を書くというのはそれなりに大変のことが多い。まず気に入った道具を持ち歩けない。小説書くのにどんな道具がいる? と思う人もいるかもしれないが、構想を練ったり、頭を整理するのにノートとペンや万年筆がいる。執筆の際にはパソコンと辞書が最低限必要だ(手書きが好きだけど、やっぱりパソコンが現実的)。そして小説を書くというのは思ったよりも資料が必要なもので、いざ書き始めると机の上、横が資料の山になることもある。

と書くと、結局必要なものはノート・ペン・パソコン・辞書・資料、とやっぱりたいした道具は必要ないと思われるかもしれない。ところが神経を使う作業だけに細かい小道具の使用感の良さが作業の効率性しかり、創造性を高めてくれると思うのだ。なんとかは筆を選ばず、とは言うが、実際には気に入った筆の方が気持ちよく創作できたはずだ。

ところが旅をしながら、という条件がつくと、いろんなものを持ち歩けない。辞書は無理。ノートは持ってるけど、いつもテーブルがあるとも限らず、かえって邪魔。資料なんて持ち歩けないどころか、旅先じゃ買うこともできない。

というわけで、目指すところはパソコン1つで書けるようにすること、に尽きる。

同じような境遇に身を置く人が多いのかは分からないが、今の時代ブログなど小説以外の文章を書きながら旅をする人もいるだろうから、私なりのノウハウを共有することも意味があるだろうと思う。これから数回の投稿でどういうソフトウェアをどういう形で使っているのかを説明したいと思う。

その第一回として、今回はともかく執筆時に使うアプリを一覧にして詳細は次回以降に回そう。

  • パソコン(Mac OSX - Macbook Air)
    • Evernote
    • Scapple
    • Scrivener
    • iText Pro
    • ATOK
  • iPod Touch(iPhoneと同等だと思っていい)
    • 大辞林
    • 角川類語新辞典
    • iText Pad
    • ATOK Pad

どれも有名なものばかりなので、気になる人は調べてみるとすぐに使い方も分かるだろう。私の連載ではマニュアル的な意味での使い方は紹介せず、私がどのように活用しているか、という視点で紹介する。

<旅する作家の道具箱>連載の予定は……

第2回 Evernoteで資料から構想まで
第3回 Scappleで構想を練る
第4回 ScrivenerとiText Pro(短編と長編での執筆手順の違い)
第5回 執筆の小道具ATOKを極める
第6回 iPhone/iPod Touchは良い補助道具

という感じで進めていく予定だ。内容、タイトル、順序など、書きながら変わっていくかもしれないが、許して欲しい。また「私はこう使っている」という情報があったら教えてくれると他の人のためにもなるかもしれない。

——————————————————
Amazonで発売中
父の筆跡・秋明菊の花びら、ほか

自分が小説を書く上でどうしても避けられないというか、無視できない時代というのが「昭和」だ。昭和を舞台にしているわけではないし、特別昭和を売、今の時代――特に今の大人を描く上で昭和の時代感ってのは凄く重要だと思う。

何しろその大人が過ごしてきた幼少期は昭和だし、その親だって昭和の大人だ。平成の前は昭和であって、昭和からの変化こそが平成を平成たらしめるわけだ。平成を舞台にしていても、昭和から逃げることはできない。

というわけで、常日頃「昭和」というキーワードに対しては敏感でありたいと思ってはいるのだけれど、外国を旅をしているとそもそも昭和どころか、日本の感覚からも遠ざかる。また、そもそも昭和について体系的に勉強したことがなかったな、と思い知るに至り、この本を読んだ。

wpid-413i+mc9twL._SL100_-2013-10-20-23-18.jpg

昭和史 1926-1945
平凡社

この本は全体的に口語体で書かれており、存分に著者の主義主張を交えながら書いているのだが、それがかえってわかりやすさを生んでいる。ともかく面白く書かれているので、これを読んでから、他の本を読んでみると読みやすいだろうと思う。

圧倒的に政治・軍事といった面から書かれており、そのときの庶民生活などは読み取りにくい。遙か上空から大局的に捉えたような書き方になっている。私の場合は小説を書くうえでの勉強ごとだと思っているので、この大局的な捉え方と地に足据えた庶民感覚の両方を知りたいと思うに至った。

この庶民感覚が感じ取れる資料を探さないと。

—————————————————
Amazonで発売中

父の筆跡・秋明菊の花びら、ほか

タイのバンコクから1時間半ほど北上した場所へバイクでやってきた。知人のご家族の家がここにあり、そこにお世話になるためだ。ここ数日滞在していたカオサン通りに比べればはるかに静かで快適な場所で、外出したくなくなるほど居心地が良い。

さて、なぜ自分は電子書籍を出版したのか。バイクで走りながら、改めて考えてみた。3つ理由があるので、挙げながら説明してみよう。

客観的な意見を聞いてみたい

私は新鷹会という小説の勉強会に所属し、会社員として働きながら、勉強会で修行している(もちろん旅に出てからは行けてない)。そこでは自分で書いた作品を現役の作家の方に批評してもらうことができる。

今回電子書籍を出してみたいという1つの動機はプロじゃない、普通の読者がどう思うのか、ということを知りたかったことにある。今回無料キャンペーンを実施して、多くの人が購入してくれたので、今後そういったフィードバックが返ってくるのを期待している。

名刺代わりになる作品を公開したい

周りに「自分は小説を書いている」と言ったところで、一般の人が買える範囲に小説が売られていないと説得力がない。今回の出版を期に「ここで買えるよ」と伝えられるのが嬉しい。曲がりなりにも「私は作家です」と自己紹介できるようになるというメリットもある(半分冗談で半分本気だ)。

電子書籍を試してみたい

さて、実はある作家と「電子書籍の可能性」について話をしたことがある。多様な意見が飛び交う中、私にせよ、相手の方にせよ「可能性を感じるから活用してみたい」という意見は一致していた。しかし可能性の話ばかりで、なかなか地に足のついたアイディアや核心が掴めないのはひとえに試したことがないからだと思う。

そこで今回試してみたことを将来何かに活かせるのではないか、と期待している。

漫画を電子書籍で売るためのノウハウなどは割と見かけるのだが、小説となると意外と情報が少ない。せっかくだから、今後の自作の売れ行きや活動をこのブログで紹介したいと思う。

――――――――――――――――――
Amazonで発売中
父の筆跡・秋明菊の花びら、ほか

旅をしていると刺激が多い。その刺激はもちろん執筆活動に対しての刺激でもある。だから、書くことに事欠かないとも言える。

ところが書くための環境というのはなかなか難しい。何日も没頭して、誰の邪魔も入らない場所で静かに取り組める環境なんてまずない。最近はバンコクにいるのだが、ホテル1階の飲食スペース(ロビーのような場所)で書いている。周りはツアー客でごった返し、時にはパーティーのように大騒ぎの中書かなくてはいけない。

wpid-IMG_1980-2013-10-13-09-391.jpg

最初、こういう環境で書くことに慣れなかった。ところがこうして長くそういう環境にいると、騒がしい中、または細切れの時間の中で書くことに慣れてくる。

これに慣れてきた時、旅する作家として活動することに対して確信を抱いたように思う。

著書「父の筆跡・秋明菊の花びら、ほか」もどうぞ